《葬儀社のSNS投稿が物議》たとえ遺族の許可を取っていても「葬儀の現場写真」が炎上してしまうワケ
商売のために「泣ける」感動ポルノをSNS投稿する葬儀業界の認識の甘さ
SNS時代。これまでは知ることのなかった世界があちこちから詳らかになるなかで、最近ネット上で物議をかもしていたのは、「葬儀の現場写真」だった。葬儀社のスタッフが祭壇や遺骨、故人の私的情報などをSNSに投稿していたというもので、SNSではモラルを問う声も多く見受けられ、炎上状態となった。ニュースサイト「エンカウント」の報道によると、当該葬儀会社は「投稿は全部(遺族などの)許可を取っている」として、問題ないという認識だったようだが、なぜ炎上したのか──。
葬儀現場写真のSNS投稿のどこに問題が潜んでいるのか。葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏が、この騒動の本質を解き明かす。
なぜ葬儀の投稿は反発を招きやすいのか
いずれどこかの葬儀社が、SNSの投稿によって炎上するだろうと思っていました。今回の炎上の背景には、一般ユーザーの葬儀画像への抵抗感と、そうした感情を軽く見ている葬儀社スタッフの認識の甘さという2つの問題があります。
昭和の時代、たくさんの参列者を招いて行われていたお葬式は、共同体で行われる公的な儀式の性格が強いものでした。その後、家族葬の普及により、お葬式は身内だけの閉じた空間で行われる極めてプライベートな儀式であるという意識に変わりつつあります。
それと同時にスマートフォンの普及により、写真を撮ることにも、撮られることにも抵抗が無くなってきています。今や喪主がお葬式で故人を撮る機会も珍しくありません。とはいえお葬式を厳粛な宗教儀式であるととらえる人も、まだたくさんいます。こうした状況で、葬儀社が顧客の葬儀画像をSNSに投稿すれば、「そんな勝手なことをしていいのか」と疑問の声が上がるのは当然です。
また日本人は、遺体や遺骨の写真に強い嫌悪感をいだきがちです。一つには見慣れていないということもありますが、死を「穢(けが)れ」として忌み嫌う日本人の民族性が大きく影響しています。
「縁起でもない!」といって終活の話をしたがらないのも、お葬式で清め塩を撒くのも、火葬場の建設に反対するのも、死に対して生理的嫌悪感を持っているからでしょう。
以前、ある喪主が、棺に納められた親の死に顔をSNSにアップしたため、炎上したケースがありました。肉親の行為なのでプライバシーの侵害という問題は一応クリアしているはずですが、それでも炎上するのは「そんな縁起でもないものを突然見せるな」と感じる人が一定数いるからでしょう。
身内の投稿でさえ炎上するのに、今回のように第三者である葬儀社が投稿したらどうなるかは言うまでもありません。
葬儀社側の認識の甘さ
このようにお葬式の写真や動画は本来、慎重に扱うべきものです。それにもかかわらず、葬儀社側の認識は甘いままです。
葬儀業界には、インターネットを含め情報の発信に不慣れな会社が多い印象があります。待ちの営業でも、継続的に仕事が入ってきた時代が長く続いたせいでしょう。
お葬式の担当を持つと、故人の死因、職業、家族構成、人間関係といった遺族に関する個人情報のかなりの部分を把握できます。個人情報保護の管理体制について基準を満たしている事業者に与えられる「プライバシーマーク」を取得するなど、情報管理を厳格に行っている葬儀社は極めて一部です。とはいえ、さすがに顧客のお葬式の画像を、勝手にネットに上げてはいけないという暗黙の了解はありました。
ところが最近、実際のお葬式動画を編集し、キャプションを付け「感動映像」としてYouTubeやSNS動画に投稿することで、再生数を稼ぐケースが目につきます。葬儀社の効果的な宣伝ツールになっているのです。
葬儀社間の競争が激しくなるなかで「背に腹は替えられない」と、なりふり構わない宣伝手法に走る葬儀社が増えても不思議はありません。
実際、今回の炎上を起こした葬儀社の回答には、他社がやっているから、自分たちもやったといった趣旨の理屈が述べられていたそうです。もちろん、「遺族の許可をもらっていれば大丈夫」という反論はあるでしょう。しかし映り込む可能性のある参列者を含む全員から承諾を得ないと厳密にはクリアできない問題です。あわただしいお葬式の現場で、それが簡単にできることだとは思えません。
なお、当該葬儀社は、SNSに〈56才、早すぎるよ〉とか、〈仕事でも悲しすぎます(泣)30歳という若さで逝ってしまうなんて。臨月のお腹の赤ちゃんは? 掛ける言葉もない!〉などといったコメントをつけた投稿をしていることも確認されています。
言葉を失うくらいの不幸な境遇の遺族には、数年葬儀屋をやっていれば何度も遭遇します。そんな絶望的な状況で葬儀社がやるべきことは、遺族のために誠実にお葬式を行うことです。商売のために「泣ける」感動ポルノをSNSに投稿することではありません。それなのに、それが分からない葬儀社が増えているというのが実感です。


































































































































































































